「家族」とは何かを考えてみる

昨今、家族に関する法律の改正の動きや見直しの議論が活発化しています。

実際、現在法務省法制審議会にある9つの部会のうち4つが、広い意味での家族法制に関する部会が占めています(民法(親子法制)部会、家族法制部会、生殖補助医療関連親子法制部会、戸籍法部会)。

裁判実務でも近年、最高裁において、生殖補助医療や選択的夫婦別姓を含め、家族に関する問題について多数の重要判断が示されるに至っています。

これらの背景には、科学技術の進歩や生物学的知見の進展、社会的認識・運動の拡大(LGBTQ+もその例でしょう)があるほか、令和4年2月に法制審が公表した「民法(親子法制)等の改正に関する要綱案」では、父性推定(嫡出推定)に関する重要な見直しが盛り込まれ、これには無戸籍の子を減らすという切迫した社会的要請があります。

これらの問題に一つ一つ真摯に向き合うことはとても重要なことです。実務家である弁護士としては、日々生起する問題にどう対処するかが最も重要な職務の一つといえます。

他方、これらは言うなれば「各論」であり、より広い視点から「家族」とは何かを考えてみても良いのではないでしょうか。

ある一国の家族法制は、その国がどのような家族を理想とし、あるいはどのような人たちを「家族」として認識し、保護しようとしているのか、つまり、その国の「家族」に関する政策や価値判断に大きく異存しています。

私たちが一体「家族」をどのように理解し、それをどのように変えていくのか、あるいは変えるべきでないのか、こうした広い視点をもつことで、家族に関する諸問題が抱える根本を理解し、より良い家族法制のあり方を考えることができるように思います。

※過去に私が書いた「家族とは何か」について記事も、よろしければご笑覧ください。

(矢野)