公正証書遺言の電子化?
「上川陽子法相は28日、公証人が作成する公正証書の電子化を検討すると明らかにした。金銭貸借や遺言などに用いられ、本人の意思確認などで慎重さが求められるため、現在は原則対面で紙媒体によって作成している。法務省で今後、法改正も視野に作業を進める。」(公正証書の電子化検討 定款手数料引き下げも 法務省 – 産経ニュース (sankei.com))
とのことです。
私が公正証書にお世話になることが多いのは遺言作成の場面です。遺言書は自筆でも作れますが、内容が曖昧になることが多く、実際の遺言執行の場面でどれだけ苦労することか・・ 自筆証書遺言保管制度はできましたが、お勧めする気にはなれません。少なくとも現時点ではやはり公正証書遺言が第一選択肢かと思います。
その公正証書遺言が電子化されるかもしれないとのこと。
例えば外国在住の方は公正証書遺言を作成することが事実上難しく、相続対策の妨げとなっています。(領事館で作成可能な制度はありますが、実際に某領事館に問い合わせたところ、経験がないのでやり方が分からないと窓口で難色を示されたことがありました。) 電子化されればそのような場面でも容易に公正証書遺言が可能になるかもしれないと思うと、期待するところ大です。
ただ、上記新聞記事にもありますが、公正証書遺言は作成時に公証人が本人の遺言能力確認・意思確認を行うために信用性が確保されている面があります。電子化でこの過程が省略されるとなると、公正証書だからこそ得られる高度の信頼性も失われるということになるような気もします。
単なるアナログ制度のデジタル化に止まらない、大きな影響を与える議論になりそうです。